僕と猫のフォトストーリー。
1.「さよなら悶太郎」
2.「にせ悶太郎、京都へ行く」
3.[ビビアンの夏休み」
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「悶太郎と僕」

「悶太郎」とは、僕と一時期生活を共にした猫である。夜道を歩いているとガリガリに痩せた生後1〜2ヶ月程の子猫が道端でうずくまっていた。僕が足を止めると奴はこちらの方に顔を向け、最後の力を振り絞るかのように音にならない鳴き声をあげるのだった。我が家へと連れていきそこで食べ物をあげると、うつろな目をしたままガツガツガツと食いはじめた奴は急に食べ物を吐き出した。よく見ると嘔吐物のなかに錆びたクギらしきものが混じっていた・・・。
 そんなこんなで「悶太郎」と名付けた猫との生活が始まったのだ。元気になった悶太郎は野良猫育ちの習性なのか、いつでも隙あらば逃げようという態度だった。そんな関係性も、日々の生活の積み重ねの中でお互い信頼しあえるようになり、たのしい同棲生活へと変わっていったのである。
 そんな楽しい生活も長くは続かず半年の月日で別れがやってきた。別れの前夜、「猫の悲しい顔」というものを初めてみた。いつものようにベッドで一緒に寝ていると、いつのまにか悶太郎がいない。起き出して「モンタ〜」と呼びながら探してみると、冷たい台所の隅で下を向いてうずくまっていた。ベッドへ連れていってもいつの間にかまた台所に・・・、初めて見せた悲しそうな顔。初めて会った時のように音にならない鳴き声をあげたかと思うとジッと僕の目をみつめるのだった。もう寝るのはやめにして悶太郎を抱き締め朝を待った。ふたりでずっと泣いていた。・・・さよなら悶太郎。

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